1.野村鎮コレクションとは何か?



 野村鎮(のむら・しずむ)氏は、コガネムシ、クワガタムシ、ドロムシ、ハナノミを中心として、 さまざまなグループの甲虫を研究し、日本とその周辺地域、特に台湾の甲虫相の解明に大きく貢献された、 在野の偉大な甲虫学者であられました。彼の死後、そのコレクションは国立科学博物館が購入し、 その管理がゆだねられました。その内容は日本及び台湾産を中心とした甲虫、数千点におよび、 その中でも分類学上最も重要なホロタイプ(正基準)標本は約400点に上ります。これらはアジアの甲虫を研究する上で極めて重要な標本であり、世界中からの貸し出し依頼が絶えることはありません。
 国立科学博物館動物研究部昆虫第2研究室では、この野村鎮コレクションを再度整理し、氏の生前、 当博物館に寄託されたホロタイプ標本も加えて画像データベース化を行い、 アジア産甲虫類の分類学的研究に資することを図りました。これによって、 世界にただ一点しかない貴重なホロタイプ標本を破壊、紛失の危険にさらすことなく、 世界中からの閲覧が可能となることを目的としています。

<野村鎮コレクションの収蔵状況>



2.野村鎮タイプ標本に関する分類学的メモ


1)タイプの指定について

 本データベースは原則としてホロタイプ(正基準標本)のみを対象としていますが、事情により各1点のアロタイプ、及びパラタイプ標本が含まれています。また、タイプの指定に関して、アステリスクを付したタイプは以下のような内容のものです。
 野村氏が(共著の場合も含めて)記載された甲虫の多くはホロタイプが指定されていますが、初期の頃の論文で指定されていないものがあります。これらは国際動物命名規約上、シンタイプ:総基準標本)となり、複数のタイプ標本が存在することになります。しかしながら、野村コレクションにおいてはシンタイプ中の1点に赤い紙が付されている場合があり、今回のデータベース化に際してはこの1点のシンタイプについて記述、画像撮影を行いました。これについてはタイプの種類の項目で「Syntype**」と記しています。また、論文中ではホロタイプが指定され、当博物館所蔵となっているもので、ホロタイプの表示がなく、「Type」とのみ記された赤い紙が付された標本がタイプシリーズ中1点見いだされました。これについてはその標本をホロタイプであると判断し、データベース中に記述すると同時に、タイプの種類の項目では「Holotype*」と表示しています。
 原記載論文の中でホロタイプが指定されていないものでも、タイプシリーズ中、ホロタイプのラベルが付された標本が1点ある場合、それをホロタイプであると認めました。このような標本は「Holotype**」と表示しています。さらに、同じくホロタイプの指定がないもので、タイプシリーズがただ1個体の標本からなっている場合、国際動物命名規約の規程により、その標本をホロタイプと認めました。このようなものは「Holotype***」と示しています。

2)タイプ標本のラベルについて

 ホロタイプには採集ラベル、タイプラベルを含めて数枚のラベルが付いています。これらのラベルは採集ラベルが一番上、それからタイプラベル、一番下には過去にカード化を図った際にチェックしたことを示す青い紙片が付されています。タイプラベルは写真のような書式の赤い大きなラベルで、野村氏自身、または当博物館でタイプ標本を受け入れた黒沢良彦博士の筆跡で種名が記入されています。これらラベルは全て画像データとして一枚の写真に収められていますが、上に付いているラベルから順に、上段左から右へ、次に下段左から右への順で並べられています。



<ホロタイプ標本に添付されたラベルの例:左,野村氏自身の筆跡によるタイプラベル(赤);黒沢博士の筆跡によるタイプラベル>

3)タイプ標本カードについて

 野村コレクションが科博へ収蔵される際に小林裕和氏の手によってタイプ標本カードが作成されました。本画像データベースはこのカードを元にして作成されました。カード記載の内容は全てデータとして転記されています。カード自体は昆虫第2研究室に保存されています。


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